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folklore
とある花婿のなくした手紙にまつわる伝承
白の外套 金の鳥籠 空を溶かした紺碧の瞳
高貴な容姿には 幾分ちぐはぐな寝ぐせの髪
魔法使いだという
花婿は道中 たびたび愛する花嫁に語りかけた
素敵な花だね きみに贈ろう
魔法使いの劇団のチケットだ もちろんきみの分も
きょうの朝日は水色をしているね 雪が降るかな――
花婿はひとりきりで旅をしていたので
語りかけたことばたちはぐるぐると回ってどこへもゆけなくなる
そのたび 花婿はことばたちを慈しむように封筒にしまってやった
おかげで彼らは迷子にならずにすんだが――
花婿は とても忘れやすかった
封筒はいつのまにか彼の外套からいなくなっていた
いつ失くしたのか どこかで落としてしまったのか
風にさらわれてしまったのか
花婿がささやいた柔らかな愛と
気まぐれに書き留めた素敵な楽譜を詰め込んで
今でもどこかの街を彷徨い――
誰かが彼の幸福を祈るとき 幻影となって姿を現すらしい
かいたひと:シオ
タグをつけてツイッターでラス花への祝福の言葉、お手紙などを贈っていただけるととても幸せになります。わたしが……!
(中身丸ごとでなければ)本や封筒の写真などもうれしいです!
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